俺がこの世で一番嫌いなものは努力だったが、今日から別なものに更新された。
それは「大成功」の看板を出して高らかに笑ってみせる、野太い声の野郎だ。
さらに舌までペロリと出されたからには、オゾン層内にこいつがいることすら我慢が出来ない。
さっそく壁際に叩きつける。
「許してください!許してください!」
必死に貝殻一枚を身にまとい、俺に子象のように許しを請う。
当然、そんな言葉だけでは怒りがおさまるはずがない。
「その貝殻も、とれよ」
「そっ、それだけは・・・!この貝殻が無くなってしまったらどうやって帰ればいいんだ!」
「お前に失う物なんて無ぇだろ!・・・そうか、俺に恥をかかせた上に反抗する気かよ。わかった・・・貝殻は許してやるがそのかわり・・・コレだ」
「ま・まさか!(岩沢風)」
俺は一冊の本を差し出した。
「そうだ。黒庭堂さんの『ベニプリ(ベニスの王子様)』乾海本“ファンタスチックバクダン”だ・・・これのキャヲルのセリフを読んでもらうぜ」
「そんな・・・!うぅう・・・ウグゥゥゥ〜!!」
「IYAとは言わせねーぜ。そら読むぞ!俺はサダファル先輩だ!」
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「ほら・・・海堂、ゆっくり開いてみせて?」
「・・・俺、自信ないッス」
「ダメ。海堂の初めては俺がもらうって決めてたんだから」
「でも、先輩・・・俺、全然知らねーし・・・先輩に何度か教えてもらったけどイマイチわかんねーし・・・」
「俺も知識だけはあるけど、こうやって見せてもらうのは海堂が初めてなんだよ」
「!じゃ、じゃあ・・・」
「そう。初めて同士だな。だから俺も緊張してる」
「・・・そうなんスか?・・・全然、見えねー」
「そこは一応『先輩』だからね。落ち着いてるフリさ」
「先輩・・・アッ・・・」
「さて、海堂が初めて海に潜って獲ってきた真珠貝は・・・これかい・・・?」
「今でも実感ないんスけど、どうにか先輩のデータのお陰で・・・初心者なのに筋がいいって、現場の皆さんに褒められたっス」
「海堂が海女さんになるって聞いた時は驚いて心臓を一個なくしちゃったけど・・・こうして俺も少しは役に立ててよかったよ」
「先輩・・・」
「ははっ、落ち着いてるつもりだったけど、天然の真珠を見るのはやはり感動モノだね。興奮してメガネがくもってきてしまった」
「先輩・・・いいッスか・・・」
「ああ、いいよ・・・くもったままじゃ見えないからね・・・そう・・・ゆっくり・・・くもったレンズにジャムおじさんを描いて・・・」
「先輩・・・アッ・・・俺、俺・・・ッ」
「大丈夫・・・バタ子さんはデータの範囲内だ・・・怖がらずゆっくりいこう・・・キャヲル・・・」
「先輩・・・サダファ、ファ、ファクショォーイ!!」
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「うう・・・もういいだろ・・・許してくれ・・・恥ずかしさで顔から鯛が出る・・・」
「へへへ!まだ終わらせねーぞ・・・次は『家庭整体師オボーン』のおシャマル×お雲雀本だぜ!これがおわったら『ヘアマニキュア』15×14田本、その次は『銀多摩』のGINさん総受本がお控えなすってるぜぇ〜!」
「うおぉ〜!GINさんは攻めが好きだー!」
<つづく>
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