みんなは土下座した人間を足蹴にした上、凍りつくような眼差しで上から見下ろしてみたことはあるかい?

オレはある。

ある、といっても本日初体験だ。

最初は試乗する程度の軽い気持ちだったのに、キャッシュで即買いするぐらいの心地よさだったんだぜ。勿論分割・ローンも可能だ。この商品はストレスがたまった現代社会に生きる人達にもってこいだ。今なら快適に足蹴にするためのガイドブック付きなんだぜ!問い合わせ、注文は番組終了後より開始。くれぐれもおかけ間違いのないよう、御注意下さい。

 

「もう・・・許してくれ・・・も、もう・・・限界だ・・・」

「・・・はっ、まだまだ付き合ってもらうぜ。ホラホラ、こちら側がお留守だぜ」

「ああッ・・・!!うう・・・ルールさえ・・・ルールさえわかっていれば・・・!!」

オレは、一瞬人間扱いをするのをやめようかと思ったこの男とドンジャラをしていた。スネオの牌が出るたびに俺たちは盛り上がり、すっかり後半チャーハン(韻)のことは忘れていた。

 

「あんた、何やらせてもダメなんだな・・・オレの初任務の時も開口一番カミカミだったし、先頭歩けば姿勢良く落とし穴にはまって、休憩時に食事を取ろうとすれば一人カラスに襲われるし・・・帰りは先頭歩いてたのに行方知れずだ。まったくしょうがねーよ、あんたは」

「もう、そんな昔の話はヤメテヨ!ワタシ、バカミタイダヨ!」

「ははは、似てる似てる。怒った顔もチャーミングな鉱石みたいでイイぜ」

「え・・・っ」

(ド・キ・・・ン!)

 

・・・・

・・・・

 

<微妙な空気が流れる。ナレーション、川上へ消える。>

 

・・・・

・・・・

 

・・・(ブッ)

 

 

ヤバイ。思わず思ってもねー事を思いもよらずに思わせぶりに話しちまった。

やめろ。スゲー見てる。頬を染めるな。せめて鉱石じゃなく岩石だったらよかったか。

 

「今のって・・・どういう意味?」

「・・・ンでもねーよ」

「嘘!何でもないなら鉱石なんて言わない!」

 

やっぱ鉱石に喰らいついたか。アイター。

「鉱石って事はさ・・・その、俺のこと・・・」

これは危険だ。この岩石もどきが余計な事を喋って事態がめんどクセー事になるのは避けたい。

 

俺は黙ってこいつの唇を塞いでやった。

 

 

もちろん、その辺の雑巾で。

 

<つづく>
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