「うるさい!」

ビシィィーーーーーーーーーーーーーーッ!!

人通りが皆無に近い中、清清しいほどのビンタの音が響き渡った。

メガネの物まね男が、血色の良くない挑発の奴を急にひっぱたいたのだ。

これにはオレも面食らった。いい腕してやがる、と。

「ちょっと、アンタ!何すんのよッ自分が注意されるようなことしてるからいけないんでしょう!?」

「うるさい、うるさい!!」

ビシビシビシビシビシビシビシーーーーーーーーーーーー!!!!

スゲェ・・・何てメガネだ。さっきまでぜよぜよと言ってヘタレ風にしていたのは、胸に秘めた情熱を隠すためのものだったのか。とにかくビンタがスゲェ。最後の「ビシー」では、血色の悪い奴が貴重な血液を鼻から噴射してしまった。

「ヤダっ、血が・・・」

「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」

メリリリーーーーーーーッ!!

ついにビンタの威力が凄すぎてめり込み始めた。不思議な光景だ。俺はせっかくの機会なので、片手にはチーズ鱈、もう片手にはこどもの飲み物(へへ・・・一応未成年だからな、悪ぃ)を用意して、ベンチに大股開きで鑑賞することにした。そういえば上映中に不審なラップ音を出しまくって劇場からつまみ出されて以来、映画館には行ってねぇな。今は何が面白いんだ?海蛇?膿猿?・・・まぁ、いい。俺はお色気時代劇以外には興味がねぇ。

「かっカブト・・・いい度胸ね・・・私をこんな状況にしておいて、この店に勤続できると思っているのかしら・・・?」

「思ってますとも!それもう一発!」

「そうはさせないわよ!!」

ビシーーーーーーーッ!

マジ凄ェ…!!速攻返り討ちだとはな。血色の悪い奴、パーペキダウンだぜ。

「へへへ、ブラボーブラボー」

「そんな品のない拍手はいらないよ。チーズ鱈が口の中から見えてるじゃないか・・・まったくお行儀の悪い。さっきの看板にしたってそうだ。大体君は何をしにここに来たんだい?」

「ああ、ちょっと通りがかりに学校をひと荒らししてきた時に知らねー奴からここの地図もらってよ・・・」

「学校・・・?ここの地図・・・?もしかしてその人は金を請求してこなかったかい?」

「あ?そーだな。500円、500円とやかましかったぜぃ?」

「!!!!やっぱりそうか・・・!!大変です、大蛇丸様起きてください!!」

「mu〜n…あなたもサイコメトラーだったのね・・・」

「そんな寝言言ってると串焼きにしますよ!起きてください!大蛇丸様の欲しがっていた人材が・・・逸材がきてるんですよ!」

「なんですってぇぇぇ!?」

逸材?なんのことだ?・・・・俺の知らない何かが動き始めているようだった。

<つづく>

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