「やっちまった・・・」
オレは目の前の思いもよらねぇ500円硬貨様のご登場に、逃亡中だという事もすっかり忘れ飛び出してしまった。
飛び出したついでに青い女学生の顔面にスクリューパンチをお見舞い申し上げた。
へへ・・・顔のパーツの7割が埋まってら。
「ななな、何するんですかアナタ!人のお金奪っておいて殴るなんて…一体何者ですのヌン!」
おっと!こいつ人だったのか。あまりの青さに、人種なのかどうか半信半疑だったがスッキリしたぜ。危なくモヤっとボールをマスターめがけて千手観音投げするところだったぜ。
しかしスッキリしたのは5秒だけだった。もう一度言っておくがオレの軽いおもてなしパンチによって、こいつ顔面パーツが7割埋まっている。埋まってるんだぜ。チューリップの球根よりも徳川埋蔵金よりも埋まってるんだぜ?それなのに喋ってやがる。
ゾクリとオレは悪寒が自分に走ったのを感じた。
走ってるんだぜ。電車に乗り遅れそうなリーマンよりもエロ本を購入してダッシュで自宅へ向かう思春期よりも走ってるんだぜ?
「ダラアァァァァアアァァーーーーー!!!!」
次の瞬間、オレはさっきよりも顔面がもれなく埋まるようなパンチでこの青い奴を殴っていた。
流石に二度目ともなると動かなくなった。だが・・・
まさか…某新キャラより感情の無いはずのこのオレが…心の奥で恐怖を感じたというのか?
そんな事があってたまるはずがない。そうだ、オレは人よりサービス精神に満ち溢れているだけだ。ガソリンスタンドは3日、マックは1日、ファミマは3時間も勤務する事が出来た。そーら!そうに違いない。
「お前・・・オレと同じ目をしているな・・・」
ふいに顔面埋まリーノ(青い奴のあだ名。オレが付けたんだぜ。)が硬貨を渡そうとしていたイタチ先輩とやらが、話しかけてきた。同じ目?どういうことだ?
「同じ目?どういうことだ?」
オレは思った事は口にするタイプなんだぜ。
「いずれ・・・わかる。とりあえず今は里へ帰った方がいい・・・無駄な犯罪暦更新はナンセンスだ」
「何だと?何で初対面のアンタにそんな事言われなきゃならねーんだよ」
「アドバイス料500円頂きます。」
「なに取ろうとしてんだよ!」
・・・くっ!やべえ・・・この先輩とやらのペースじゃねえか。このオレが・・・
「里には帰る気なんてねーんだよ。あそこには熊のような鉱石のようなヤローがいるんだ・・・きっと鬼不味いポトフでも作ってお待ちかねしているかもしれねぇ・・・とにかく見知らずのアンタの指図は受けねーよ、じゃな」
「ではここに記されている場所へ行くといい・・・」
「なんだコレ?地図か?」
「500円、500円」
「ダァー!しつけーよオラァッ!」
オレは500円硬貨を遠くに投げ飛ばした。先輩と呼ばれる男は物凄く速く、つま先だけの動力で硬貨をおっかけていった。
青いのは・・・まだ動かねーみたいだが・・・まぁいいか。明日の天気のほうが気になる。そういや、さっきの地図は何だったんだろう。天気よりは気にならなかったが、それなりに気になって広げてみる。地図に赤い矢印。
「こ・・・これは・・・?」
そこには『倶楽部OROCHI』の文字があった。
<つづく>
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